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「前厚生労働大臣 田村憲久先生を囲んでの意見交換会」

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現場の声、地方の声を国政へ!

ケアハウス健祥会リバティに前厚生労働大臣田村憲久 衆議院議員を迎え、「前厚生労働大臣 田村憲久先生を囲んでの意見交換会」が開催されました。

自民党が地方の声を聞く場として2009年より随時開催している「ふるさと対話」の一環として、徳島県選出の福山守 衆議院議員が労をお執りくださり、健祥会グループ理事長 中村太一が「ふるさと対話集会」代表世話人となって、医療、介護、保育、障がい福祉、介護人材育成の関係者に参加を促し、実現したものです。

田村憲久 前厚生労働大臣
田村憲久 前厚生労働大臣
福山守 衆議院議員福山守 衆議院議員
福山守 衆議院議員

冒頭、中村太一が「田村前大臣と健祥会グループ創始者中村博彦は長きにわたって親しくお付き合いをさせていただきました。福祉についても深くご理解くださっている田村先生にこのような機会をいただき感謝しています。今日は本音で語り合い、現場の声をしっかりお伝えしたいと思います」と挨拶。福山議員からは「少子化高齢化にまつわる課題が徳島には山積しています。厚生労働分野に関して党内きっての手腕を持つ田村先生に忌憚ない意見を届けてください。私も皆さんのご意見を伺い、国政に反映させていけるよう頑張ります」との言葉をいただきました。

「中村博彦先生にはずいぶん可愛がっていただきました。先生のバイタリティあふれる応援演説に励まされ、6回目の当選を果たし、今7期目を務めています。厚生労働の現場は課題山積です。また介護現場も介護報酬マイナス改定や深刻な人材不足など苦しい現状にありますが、皆様から現場の声をいただき、お答えできることにはしっかりとお答えし、できないことは持ち帰って検討し、課題としてまいりたいと思います」との田村議員からの挨拶を受けて、意見交換会がスタートしました。


徳島県老人福祉施設協議会役員からは介護現場の課題について、徳島商工会議所役員、議員からは医療・介護に関する問題や福祉用具についてなど、徳島県薬剤師会 役員は調剤報酬について、また、健祥会グループからは、法人本部の部長、特別養護老人ホーム施設長、保育園園長、障がい福祉施設長、専門学校教員がそれぞれの立場から質問と課題提起を行いました。そのほか、医療事業者の方々をはじめ、介護福祉士、理学療法士、看護師、管理栄養士、保育士など現場の多職種も参加しました。
田村議員は一つひとつの問いかけ・訴えに、丁寧に耳を傾け、一つひとつに対して真摯なご意見くださいました。

意見交換の主な内容

【介護福祉】

問:現在、厚生労働省が進めている「地域包括ケアシステム構築」と新三本の矢で掲げられた「施設整備」による介護離職ゼロとの整合性をどのように図っていかれるのか。
答: 「地域包括ケアシステム構想」には在宅の充実だけでなく、介護拠点の緊急整備が含まれる。「施設整備」についてはこの計画を前倒しで進めていくという考え方を示したものであり、ふたつの理念はバッティングしているわけでない。「地域包括ケアシステム構想」の中で24時間巡回型訪問介護などが広がれば独居でも高齢夫婦世帯でも在宅生活が可能になることもある。在宅であろうと施設利用であろうと、とにかく介護のための離職をなくしていくということだ。
問:軽減税率に絡んで、総合合算制度が見送られたが、軽減税率のあり方次第では消費税分を充てるとしていた社会保障費が削られてしまうことを非常に憂慮している。
答:軽減税率・給付金・総合合算制度のいずれかに4千億円を充てるということであり、社会保障の充実のための2.8兆円は確保されている。
問: 福祉分野の有効求人倍率は3.78倍(4~6月期、福祉人材センター・バンク職業紹介実績報告)と非常に高くなっている現状を踏まえ、施設整備の際の人材確保についてどのような対策を取っていかれるおつもりか。
答:生産年齢人口も新卒者も激減する中、2025年には介護職員が38万人不足すると言われている。介護従事者をキャリアパスに基づくピラミッド型で捉えたとき、ベース部分については高齢者や離職者、女性の担い手を増やすとともに、外国人の手も借りなければならないだろう。技能実習制度の介護分野への拡充や、養成校卒業の留学生に在留資格を与えようという法案が継続審議中だ。準介護福祉士もしくは介護福祉士補などの資格だ。一方で、日本の若い人が胸を張って仕事できるよう、管理する立場の上位資格をつくることも考えないといけないだろう。
問: 介護職の平均給与が他職種よりも10万円以上も低いのは労働生産性の低さによるが、介護サービスは公定価格なので事業者の努力では如何ともしがたく、介護報酬が下がり恒久的な財源の確保が見通せない状況では、ベースアップは大変難しい。食事に入浴、つきっきりでお世話と医療的ケアも提供して、一泊1万円、そんなホテルがどこにあるだろうか。介護報酬の在り方を見直さなければ、施設整備も絵に描いた餅になってしまうのではないか。
答:170万人の介護職の給与を10万円上げようと思えば2兆円の財源が必要だ。厳しい財政の中、国民の懐具合を思い描けば、これ以上保険料には転嫁することは不可能だ。また自由価格にすればさらに高騰するだろう。一律に引き上げるのではなく、経営面に携わるようになればアップするなど、若い人のやる気を喚起する魅力ある職場になるよう、制度設計をしっかり考えていきたい。
問:今年、介護報酬は総額で2.27%の大幅なダウンとなった。多数設けられた加算を取得せねば経営が成り立たない状況である。加算の仕組みは事業者には煩雑の極みであり、利用者にはわかりづらさの極みとなっている。加算算定のための事務作業も膨大である。制度の煩雑さを軽減し、簡素で誰にでもわかる制度にしてほしい。
答:介護事業経営実態調査に参加協力できるのは、ある程度体力のある事業所であり、その数字だけが集まって、踊ってしまった感がある。現場の声を聞きながら、しっかりしたデータと情報に基づき、適切に汲み上げていかねばならない。加算については、もっと整理する必要があり、その方向ですすめていきたい。

【介護福祉士養成】

問:介護人材が不足している現状にもかかわらず、1850時間の教育を受けている介護福祉士養成施設卒業者に対し、国家試験の義務化を漸進的に導入する必要があるだろうか。しっかりと必要な技能・知識を身につけさせて送り出している養成校に信頼をおいていただけていないのかと残念に思う。留学生が入学を考えるハードルが高くなると危惧するがいかがお考えか。またEPAの就学コースや留学生については費用支援が大きなポイントとなるが支援の用意はあるか。
答:国家試験義務化は養成機関の質にばらつきがあることに起因する。介護福祉士は業務独占でないこともあって、キャリア形成できるシステムを構築するためにはやはりこの流れは変わらないだろう。外国人については国家試験と在留資格をセットで考えている。養成校ルートで在留資格付与の道筋をつけていきたい。留学生の費用支援については、日本で必要な介護人材養成のためという観点からなら可能だと思うので検討したい

【福祉用具】

問:6ヶ月に一度の福祉用具のモニタリングやメンテナンスの義務を履行している事業所を評価する仕組みを検討していただけないか。また、イコールフッティングの観点から、在宅同様、施設サービスにおける福祉用具のレンタルを介護保険給付の対象にできないか。どんどん新製品もできており、施設サービスの質向上にもつながると考える。
答:モニタリングやメンテナンスは現状では必ずしも義務ではなく、また義務化は難しいが、指導はしていきたい。規制強化の方向はとりたくないが、安全のための問題意識は持つようにしたい。レンタルについては、報酬体系が異なるので在宅のような貸付は施設では難しいが、報酬の中で手当てできないか考えていきたい。我々では気付かない視点をいただき、有難い。

【障がい福祉】

問:厚生労働省は、65歳に達した障害者の介護保険サービスへの移行に当たって、自治体に対して、一律に障害福祉サービスの支給停止は行わないよう通知しているようであるが、実態は介護保険優先の原則を理由に支給停止しがちな傾向になっている。介護保険になると負担増やサービス減になる人が多い。これまで受けていた障害福祉サービスを継続利用できるようにしてほしい。
答:私個人の意見ではあるが、65歳になればすべて介護保険に移すがサービス提供者が変わることはなく、同じ事業者で同じサービスが受けられ、その際、9割は介護保険から、1割は障害福祉予算から拠出するという制度にしたいと考えている。そうすれば本人負担は変わらずに同じサービスが継続できることになる。

【保育】

問:子ども・子育て支援新制度が施行されたが、今一番切実なのは人材不足だ。保育士確保プランで人材育成や潜在保育士の再就職支援なども示されているが、実際に十分活かされているとは言い難い。全国的な状況はどうなっているか。また、公立・私立の職員処遇に格差がある中で、処遇改善を行政としてどのように考えているか。
答:潜在保育士の掘り起こしについて、保育士・保育所支援センターでの求人に対するマッチングは必ずしもよくない。新卒者を保育所につなぐ努力をしないといけない。そのためには処遇改善が必要だ。子ども・子育て支援新制度において、民間の保育士給与は平均3%アップした。加えて、公務員給与の見直しに準拠した2%を加えると5%のアップになっている。これをあと2%積み増しできればと考えている。東京などでは幼稚園教諭や学校教諭の活用ということも考えざるを得ない。また人材配置基準を緩めたくはないが、いかんせん保育士は足りない。ありとあらゆる策を講じていくが、質の向上は大命題だ。

【調剤薬局】

問:10月23日に示された「患者のための薬局ビジョン」では、調剤基本料の特例要件の拡大や、後発薬の数量シェアにかかわる減算などが求められており、厳しい内容となっている。また、かかりつけ薬局として在宅服薬指導の強化や24時間対応・在宅対応が挙げられているが、夜間の在宅については人件費の算出が難しいのが現状だ。
答:20店舗以上構えているところは実際に利益率が高い。こうした門前の大手チェーン薬局が狙い撃ちされた格好だが、健康サポート薬局への加算、夜間の加算などを検討し、頑張っている町の薬局を守れるような報酬体系にしていきたい。

安心で持続可能な社会保障制度構築のために

田村議員の多岐にわたる制度への深いご造詣と現場へのあたたかな眼差し、そして公平公正な視点に出席者一同、大きな感銘を受けるとともに、活発な意見交換により中身の濃い発展的な時間となりました。
最後に、徳島商工会議所副会頭中村孝雄氏から「はるばる徳島までお越しいただき、貴重なお時間を頂戴しありがとうございました。一つひとつ親身に丁寧にお答えいただき本当に有意義な対話集会でした。心から感謝申し上げます」との謝辞を、また中村太一から「得難い場を設けていただき感謝申し上げます。悩みの多い現場ですが、議員の真摯なお言葉に勇気をいただきました。私たちの要望や意見を一つでも二つでも国会に届けていただければ幸いです」と締めくくりの挨拶を申し上げました。

少子化・超高齢化・労働人口減少の中、課題山積の社会保障制度ですが、国民の安心を担保する制度となるよう、引き続きご尽力とご指導をお願いし、提言書をお渡ししました。私たち事業者も制度の担い手としての使命感を持って、効率化と品質向上に邁進してまいりたいと思います。
良い機会をくださった田村先生、福山先生、ご出席下さった皆様方に心よりお礼申し上げます。

 

[記事公開日]2015/11/17(火)

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