皆様は唐箕(とうみ)という道具をご存じでしょうか?
中国で発明され、日本では明治時代から大正時代にかけて広く普及し、
昭和時代中期ごろまで使用されていたという、
脱穀した後の穀物に風を当て、ごみや軽いもみ殻等を吹き飛ばし、
実の詰まった重い粒だけを選別する農具です。

今回行われた三島小学校児童との交流会の傍らで静かに紡がれた、
この唐箕(とうみ)をめぐる小さな物語をご紹介します。
事の発端は、ヘルス入所者S氏と職員Kの何気ない会話からでした。
「10年以上前になるかなあ。三島小学校に唐箕(とうみ)を寄贈したんです。
もう使うことのない唐箕(とうみ)を捨てるのもちょっと気が引けたので、
知り合いだった当時の校長先生に相談してみたんです。
そうしたら、ぜひ小学校に展示して児童の勉強に役立てたい、
とのことで、持って行きました。」
以前から交流のある三島小学校について、S氏はそんなエピソードを語ってくれました。
そのエピソードはずっと職員Kの頭の片隅に残っていました。
その後、職員Kは交流会の打ち合わせで訪れた三島小学校の玄関にて、
静かに展示されている唐箕(とうみ)を見つけて驚きました。
(これは、S氏の語っておられた唐箕(とうみ)ではないのか!)
そして職員Kは、この唐箕(とうみ)とS氏を必ず引き合わせると心に決めました。
その再会が実現したのは先日の交流会の後でした。
先生にお話しすると驚かれ、「ちょうど5・6年生が勉強したところなんです。
今では資料館に行かないと見られないものが小学校にあるなんて
本当にありがたいことです。」と喜ばれておられ、
S氏と唐箕(とうみ)の再会に協力いただきました。
S氏と唐箕(とうみ)の間には、静かな時間が流れていました。
しかし、この物語には後日談があります。
交流会から数日して、S氏は申し訳なさそうな顔で職員Kにこう語られたのです。
「実は、あの唐箕(とうみ)はどうも私が持って行ったものではない気がするのです。
私のはもう少し小さくてあんなにきれいではなかった気がするのです。」
長い年月を経ての再会に、思いをはせておられたと思っていたあの静かな時間に、
(実はこれはどうも違う気がするけど、ここで言うのも申し訳ないなあ)、と葛藤されていたとは!
こうしてこの美しい物語は何とも言えぬ笑い話となったのです。
しかし、10年以上前にS氏が三島小学校に唐箕(とうみ)を寄贈されたのはまぎれのない事実であり、
真相はどうであれ、
S氏は今回久しぶりに三島小学校を訪れることができたことを大変喜ばれておられます。
そして、S氏と唐箕(とうみ)の再会の写真は、
やっぱり何度見ても美しい。

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